「黒字なのに返せない? 銀行が見る『本当の返済能力』とは」

融資返済

銀行融資で重視される「返済可能額」とは? ー営業利益・経常利益・当期利益の違いを解説

こんにちは。ワタナベミエです。
銀行の融資審査やリスケ(返済条件変更)の場面で、必ずテーマになるのが返済可能額。経営者が「利益が出ているから返せる」と考えていても、銀行は単純に当期利益(純利益)を基準にはしません。
実務では目的に応じて、営業利益+減価償却費(新規融資の審査)や経常利益+減価償却費(リスケ時の返済額算定)を使い分けます。


会計上の利益と現金のズレ

  • 減価償却費:費用に計上されるが、現金の支出は発生しない(非現金費用)。
  • 借入返済:現金は出ていくが、損益計算書(PL)には費用として載らない。

このズレがあるため、PLの利益をそのまま返済原資とみなすと、実際に返済に回せる現金を過大/過小評価してしまう恐れがあります。

新規融資の審査では「営業利益+減価償却費」

営業利益+減価償却費=本業で稼ぐ力+現金支出を伴わない費用 であり、安定性が高く、返済の基礎体力を示すものです。

例)営業利益 500万円 + 減価償却費 200万円 = 返済原資 700万円
→ この範囲での年間返済計画なら安全と判断されやすい。

リスケ時は「経常利益+減価償却費」

リスケ(返済条件変更)では、支払利息などの営業外収支も反映した経常利益+減価償却費がよく使われます。
理由は、リスケでは「利息を払いながら、元金をどの程度返せるか」が焦点になるため、営業利益より厳しい見方をされます。

間接法キャッシュフロー(会計理論)と銀行実務の違い

キャッシュフロー計算書(間接法)は会計理論上、税引前当期利益からスタートして、減価償却費の加算や運転資本の増減調整を行います。したがって「当期利益ベースを使う」こと自体は正しい手順です。
ただし、銀行が返済可能額を評価する際には、税金・特別損益等の影響を除き、安定性の高い利益(営業利益・経常利益)を基準に置くことが多い――これが実務上の使い分けです。

どの利益を基準にする?(比較表)

指標 特徴 銀行での使われ方
営業利益+減価償却費 本業の稼ぐ力に非現金費用を加算。安定性が高い。 新規融資や通常の返済能力を判断するときに最重視。
経常利益+減価償却費 利息や営業外収支を含む。より現実的な実力値。 リスケ時の返済額算定に利用。
当期利益+減価償却費 税金・特別損益の影響が大きい。数値がぶれやすい。 返済余力の直接判定には不向き(参考程度)。

銀行がよく使う計算式(実務ベース)

(営業利益 もしくは 経常利益)
+ 減価償却費
= 返済原資(基本)
- 将来必要な設備投資(更新設備投資の目安)
= 安全な返済可能額
  

※社長の生活費は通常「販売管理費の役員報酬」に含まれているため、あらためて控除しません。
ただし、役員報酬を極端に低く設定し、実際は会社からの貸付で生活費をまかなっていて貸付金が膨らんでいるケースがあります。このように「帳簿と実態がズレている場合」は銀行が補正して返済可能額を算出することもあります。

シミュレーション:利益は同じでも返済余力は違う

同じ「当期利益100万円」でも、返済可能額は大きく変わります。

会社 営業利益 減価償却費 経常利益 当期利益 営業利益+償却 経常利益+償却
A社 300万円 200万円 280万円 100万円 500万円 480万円
B社 100万円 300万円 80万円 100万円 400万円 380万円
C社 300万円 50万円 280万円 100万円 350万円 330万円
D社 50万円 200万円 30万円 100万円 250万円 230万円

まとめ

  • 新規融資の審査では営業利益+減価償却費を重視。
  • リスケ時の返済額は経常利益+減価償却費で現実的に算定。
  • 間接法のCFは会計理論上税引前当期利益から算出するが、銀行実務は安定性を考え営業・経常利益を起点に使い分ける。
  • 役員報酬に収まらない生活費など会社からの資金流出(役員貸付金の増加等)や定期的な更新設備費用は、返済原資の調整対象。

結論:「利益が黒字だから返せる」とは限りません。銀行は、実際に返済へ回せる現金=キャッシュフローを基準に、返済可能額を判断しています。

👉 では実際に初めて銀行で融資を受けるにはどうしたらよいのでしょうか?
詳しくは 初めて融資を受ける経営者必見!審査をスムーズに進めるために必要な書類とその理由 で解説しています。

 


出典・参考

  • 日本政策金融公庫『小企業の経営指標調査』
  • 2025年版 中小企業庁『中小企業白書』
  • 2025年版 中小企業庁『小規模企業白書』

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