銀行員が困る社長の7つの特徴|銀行の融資担当者が語る「稟議が書けない社長の言動」

銀行活用術

「銀行員に嫌われたら、融資を断られるのだろうか」

銀行へ融資を申し込む経営者のなかには、担当者への接し方を気にする方もいるでしょう。

最初にお伝えすると、担当者の好き嫌いだけで融資の可否が決まることはありません。審査の基本になるのは、会社の財務内容、資金の使い道、返済力などです。

しかし、融資担当者が会社の状況を正確に理解できなければ、審査を前へ進めるための稟議書を書けません。

融資担当者は、社長から聞いた話をそのまま上司へ伝えているわけではありません。決算書や試算表と面談内容を照らし合わせ、「なぜこの資金が必要なのか」「どのように返済するのか」「この会社をなぜ支援するのか」を稟議書にまとめます。

そのため、社長の何気ない言動によっては、会社に強みがあっても、担当者が行内で説明する材料を集められないことがあります。

この記事では、銀行で長年融資業務に携わってきた私が、「これでは稟議が書けない」と困る社長の言動を7つ紹介します。単なる銀行員の好き嫌いではなく、それぞれの言動がなぜ融資を進めにくくするのか、現場の視点からお話しします。


結論|担当者を味方につけるとは、稟議を書ける材料を渡すこと

銀行の融資担当者を味方につけると聞くと、「担当者に気に入られたほうが融資に有利なのか」と思うかもしれません。

しかし、接待をしたり、必要以上に下手に出たりすることではありません。

融資担当者が本当に助かるのは、会社の現状、借入金の使い道、今後の見通しを社長自身の言葉で説明してもらえることです。悪い情報も早めに共有され、必要な資料がそろえば、担当者は会社の状況を正確に稟議書へ書くことができます。

融資担当者が稟議書に書かなければならないこと

  • 会社はいくら必要としているのか
  • 借りたお金を何に使うのか
  • どの利益や収入から返済するのか
  • 業績が悪い場合、原因と改善策は何か
  • 今後も銀行が支援する理由は何か

銀行員が困るのは、「感じの悪い社長」よりも、こうした内容を確認できない社長です。

では、どのような言動が担当者を困らせ、稟議を書きにくくするのでしょうか。


1.都合の悪い事実を隠す

融資担当者が最も困るのは、赤字そのものより、重要な事実をあとから知ることです。

たとえば、売上の大きな取引先が離れた、税金の支払いが遅れている、ほかの金融機関への返済が厳しくなっているといった情報です。

社長にとっては、「話したら融資を断られるかもしれない」と考え、できれば伏せておきたい情報でしょう。しかし、決算書、預金口座の動き、信用情報などから、銀行があとで把握することもあります。

そのときに担当者が考えるのは、問題の大きさだけではありません。

「なぜ最初に話してくれなかったのか」「ほかにも聞いていないことがあるのではないか」という疑問が生まれます。

こうなると、担当者は稟議書に書いた内容を最初から確認し直さなければなりません。社長の説明をそのまま信用できなくなり、追加資料や再面談が必要になるため、審査も遅れます。

悪い情報は「原因と対策」をセットで話す

銀行は、悪い情報が一つあるだけで必ず融資を断るわけではありません。

「主要取引先との契約が終わり売上が減ったが、固定費を見直し、新しい販売先とも交渉している」というように、事実、原因、今後の対策を順番に説明してください。

私たち融資担当者にとっては、隠されるよりも、早い段階で正直に相談してもらうほうがはるかに対応しやすいのです。


2.自分の会社やお金の流れを説明できない

融資を希望して銀行へ来たにもかかわらず、主な取引先、最近の売上、必要な金額、今後の見通しをほとんど説明できない社長がいます。

細かな決算書の分析まで求めているわけではありません。しかし、「最近、売上が落ちた理由は何ですか」と聞いても答えがなく、「数字は税理士に任せているからわからない」と言われると、担当者は困ってしまいます。

経理を税理士や従業員に任せること自体は問題ありません。ただ、会社を経営し、借入金を返済する責任を負うのは社長です。

自社のお金の流れを把握していない社長に対しては、銀行も「資金繰りが悪化したときに気づけるだろうか」「業績が下がったときに対策を打てるだろうか」と不安になります。

銀行員と同じように説明する必要はない

難しい財務用語を覚える必要はありません。少なくとも、次の項目は自分の言葉で話せるようにしておきましょう。

  • 何を、誰に販売している会社なのか
  • 最近の売上や利益は増えているか、減っているか
  • 現在の借入金と毎月の返済額はいくらか
  • 今回いくら必要で、何に使うのか
  • 今後どのように売上や利益を確保するのか

面談ですぐに答えられないことがあっても、「確認して後日回答します」と伝えれば構いません。わからないことをごまかすより、確認して正確に答えるほうが信頼できます。


3.コンサルタントが作った計画を自分で理解していない

業績が厳しくなった会社が、専門家の支援を受けて事業計画を作ることがあります。第三者の知識を借りることは悪いことではありません。

問題は、立派な計画書が提出されているのに、社長へ質問すると内容を説明できないケースです。

「それはコンサルタントが作ったので、詳しいことはわかりません」と言われると、担当者は稟議書に「この計画には実現性がある」と書けません。

銀行が見ているのは、計画書の見栄えではなく、社長がその計画を実行できるかどうかです。売上を増やす計画なら、誰が、いつまでに、何をするのか。経費を削減する計画なら、どの費用を、いくら減らすのか。社長が理解していなければ、計画は作っただけで終わる可能性があります。

計画書を自分の言葉へ置き換える

専門家に作成を手伝ってもらった場合でも、銀行へ提出する前に、少なくとも次の点を確認してください。

  • 売上計画の根拠は何か
  • 計画を実行する担当者は誰か
  • いつまでに何を行うのか
  • 計画どおりに進まない場合はどうするのか

多少たどたどしくても、社長自身が考えて話していることは担当者に伝わります。きれいな資料を提出することより、自分の会社の計画として説明できることのほうが重要です。


4.厳しい質問をされると怒り出す

業績が厳しい会社の社長に、「今後どのように売上を回復させますか」「この返済額を続けられますか」と尋ねると、責められたと感じて怒り出す方がいます。

以前、決算書の不明点について質問を続けたところ、感情的になった社長から、銀行の窓口で現金や通帳を受け渡すトレーを投げつけられたこともありました。

もちろん、これはかなり極端な例です。しかし、声を荒らげたり、話題をそらしたりしても、審査上の疑問は消えません。

融資担当者は、社長を困らせるために質問しているわけではありません。上司や審査部門から聞かれる内容を想定し、稟議書に不足している材料を集めています。

質問に答えてもらえなければ、担当者は行内で説明できません。確認できない部分は不明なまま残り、結果として審査が慎重になります。

答えにくいときは質問の意図を確認する

質問の意味がわからない場合は、「銀行はどの点を心配しているのでしょうか」と確認して構いません。すぐに答えられなければ、「資料を確認して後日回答します」と伝えてください。

その場を取り繕った回答より、根拠のある回答をあとから出してもらうほうが、担当者は稟議書を書きやすくなります。


5.面談時間や資料の提出期限を守らない

経営者が忙しいことは、銀行員も理解しています。一度遅刻した、一度資料の提出が遅れたというだけで、融資を断ることはありません。

ただし、連絡のない遅刻や提出の遅れが何度も続くと、担当者は不安を感じます。

融資は、毎月決められた日に返済するという約束です。そのため、面談時間や資料の期限といった小さな約束を守れるかどうかも、会社や経営者の管理能力を見る材料になります。

また、銀行の融資は、担当者一人の判断では実行できません。資料を確認し、稟議書を作成し、上司や審査部門の決裁を受け、契約書を準備します。保証協会付き融資であれば、保証協会の審査も必要です。

書類がそろわないままでは、担当者も稟議を書き始められません。希望する融資日に間に合わなくても、銀行だけの責任とはいえないのです。

遅れるとわかった時点で連絡する

重要なのは、一度も遅れないことではありません。間に合わないとわかった時点で、理由と提出できる日を連絡することです。

「試算表は金曜日まで、資金繰り表は翌週火曜日まで」と、そろった資料から順に出す方法もあります。早めに相談してもらえれば、担当者も審査の日程を調整できます。


6.融資を受けたあとに約束を守らない

融資を申し込むときには、「毎月試算表を提出します」「赤字部門を見直します」「役員報酬を減らして収支を改善します」と話していたのに、融資を受けたあとは何もしない社長がいます。

社長は、融資を受けた時点で話が終わったと思うのかもしれません。しかし、銀行では融資後も業況を確認し、約束した改善策が実行されているかを見ています。

前回の約束が守られていなければ、次に資金が必要になったとき、担当者は過去の経緯を無視できません。

どれほど立派な新しい計画を提出されても、行内では「前回の計画も実行されていない」「今回の約束は本当に守られるのか」という意見が出ます。

融資担当者としても、実行されなかった前回の計画について説明しないまま、新しい稟議を書くことはできません。

実行できないときも報告する

計画どおりに進まないことはあります。大切なのは、できなかったことを放置しないことです。

「採用予定者が辞退したため、別の採用方法を検討している」「売上目標には届かなかったが、固定費を月20万円削減した」など、結果と次の対応を報告してください。

計画の未達そのものより、何も報告せず、次の融資相談のときだけ新しい計画を持ってくるほうが信用を失いやすくなります。


7.資金が必要になる直前まで相談しない

「来週の支払いに間に合うように貸してほしい」と、突然相談されることがあります。

社長から見れば、銀行にはお金があるのだから、すぐに貸せるように思えるかもしれません。しかし、融資は預金口座からお金を移すだけの手続きではありません。

担当者は、必要な金額と資金使途を確認し、決算書や試算表を分析し、返済できる根拠を稟議書にまとめます。その後も、上司や審査部門の決裁、契約書の作成などが必要です。

相談が遅いと、社長への確認や不足資料の準備に使える時間がありません。担当者が急いで稟議を書いても、説明が不十分なら決裁は得られません。

また、資金繰りが限界になってからでは、銀行が提案できる方法も少なくなります。通常の融資が難しくなり、返済条件の変更を含めた対応を検討せざるを得ない場合もあります。

資金不足が見えた段階で相談する

資金繰り表を作り、数か月後に資金が不足するとわかった時点で銀行へ相談してください。

必要な時期、金額、理由がわかれば、担当者も準備すべき資料や利用できる融資制度を早めに案内できます。まだ資金が残っているうちの相談は、決して恥ずかしいことではありません。


女性や若手の担当者を軽く扱う社長を見て思うこと

ここまでの7項目とは別に、融資審査とは直接関係しなくても、銀行員として残念に感じる言動があります。

初対面で「女性が融資を担当するのか」「若い人では話にならない」と、担当者の性別や年齢だけで能力を決めつけることです。

私自身も、まだ話を始めていない段階で「なんだ、女性が担当なのか」という態度をとられたことがあります。

もちろん、その一言だけで融資を断ることはありません。ただ、担当者の話を聞かず、必要な質問にも答えてもらえなければ、会社の良さを十分に把握できません。

融資担当者の後ろには、上司や審査部門がいます。担当者が面談で集めた情報をもとに稟議書を作り、会社を支援する理由を行内で説明します。

担当者に不安がある場合は、性別や年齢ではなく、「必要書類と今後の日程を明確にしてほしい」「質問への回答がわかりにくい」など、改善してほしい点を具体的に伝えていただければと思います。


銀行員が「この会社を応援したい」と思う瞬間

業績が良い会社だから応援したくなり、赤字の会社だから何もしたくない、という単純なものではありません。

赤字の理由を隠さず説明し、改善のために何をするのかを自分の言葉で話す社長を見ると、融資担当者も「この会社のために何ができるか」を考えます。

私が稟議を書くときにも、数字だけでは表せない会社の強みを探します。

長年取引を続けている得意先がある、他社にはない技術を持っている、従業員が社長を信頼している、赤字でも改善策を一つずつ実行している。こうした情報は、会社を支援する理由として稟議書に書くことができます。

反対に、社長が何も説明してくれなければ、担当者が会社の強みを想像して書くことはできません。

担当者が稟議を書きやすい社長の共通点

  • 悪い情報も隠さず、早めに相談する
  • 自社の現状を自分の言葉で説明する
  • わからないことは確認して回答する
  • 提出期限や融資後の約束を守る
  • 計画どおりに進まないときも経過を報告する

融資担当者を味方につけるとは、機嫌を取ることではありません。担当者が行内で会社を説明できる材料を、正直かつ早めに渡すことです。


銀行員に嫌われる社長についてよくある質問

担当者との相性が悪いだけで融資を断られますか?

担当者個人との相性だけで融資の可否が決まるわけではありません。財務内容、資金使途、返済力、これまでの返済実績などを総合的に審査します。

ただし、必要な情報をもらえない、説明がたびたび変わるといった場合は、担当者が稟議書に融資の妥当性を書けず、審査が慎重になることがあります。

数字に詳しくない社長は融資で不利ですか?

専門的な財務分析までできなくても、それだけで不利になるわけではありません。ただし、最近の売上や利益、現在の借入金、毎月の返済額、今回必要な資金など、自社の基本的な数字は把握しておく必要があります。

担当者に好かれるために何をすればよいですか?

担当者に好かれようとする必要はありません。会社の現状を正直に伝え、必要資料を提出し、約束したことを実行してください。問題が起きたときに早めに相談できる関係を作ることのほうが重要です。

銀行員へ話したくない情報も伝えるべきですか?

融資判断に関係する事実は正確に伝える必要があります。特に、売上減少、赤字、税金や社会保険料の滞納、ほかの借入、大口取引先の変化などは重要です。何を伝えるべきかわからない場合は、担当者に審査上必要な情報を確認してください。


まとめ|銀行員に好かれるより、行内で説明できる会社になる

担当者が「稟議を書けない」と困る7つの言動

  • 都合の悪い事実を隠す
  • 自分の会社やお金の流れを説明できない
  • コンサルタントが作った計画を理解していない
  • 厳しい質問をされると怒り出す
  • 面談時間や資料の提出期限を守らない
  • 融資を受けたあとに約束を守らない
  • 資金が必要になる直前まで相談しない

銀行員が社長の好き嫌いだけで融資を決めることはありません。しかし、会社の状況を確認できなければ、担当者は融資の必要性や返済の見込みを稟議書に書くことができません。

反対に、業績が厳しいときでも、現状を正直に伝え、改善策を実行し、経過を報告する社長であれば、担当者も支援する方法を考えやすくなります。

銀行との信頼関係は、特別な付き合いによって生まれるものではありません。都合の悪いことも話し、約束を一つずつ守る。その積み重ねが、資金が必要になったときに相談しやすい関係をつくります。

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