飲食店は、開業のハードルが比較的低い業種です。
その一方で、数年以内に廃業するケースも少なくありません。
「景気が悪いから」「コロナの影響が残っているから」——
そう言いたくなる気持ちはわかります。でも、赤字が慢性化している店には、景気とは別の「構造的な問題」が潜んでいることがほとんどです。
融資の相談で多くの飲食店経営者の方と向き合ってきた経験から、正直にお伝えします。
💬 融資担当のホンネ:
「赤字だから融資できない、ではありません。でも、赤字の原因をわかっていない経営者には、正直貸しにくい。」
まず結論から
赤字が慢性化する飲食店には、共通して4つの構造的な問題があります。
① 高コスト体質(原価・人件費・家賃のバランスが崩れている)
② 低収益モデル(客単価と回転率が低く、満席でも利益が出ない)
③ 数字管理の不足(月次の損益を正確に把握できていない)
④ 外部環境とのミスマッチ(業態や価格帯が時代に合っていない)
この4つのうち、どれか一つでも当てはまる場合、売上を増やすだけでは赤字は解消しません。構造から見直すことが必要です。
問題① 高コスト体質——「こだわり」がコストを押し上げる
飲食店の収益を左右する主要コストは「原価率・人件費・家賃」の3つです。この3つのバランスが崩れると、客席が埋まっていても利益が残りません。
- 「食材にこだわりたい」→ 原価率が40%を超えるメニューが並ぶ
- 「立地が命」→ 売上規模に対して家賃負担が重すぎる
- 「スタッフを手厚くしたい」→ 人員配置が売上に対して過剰になる
経営者としての思いはよくわかります。ただ、「こだわり」がコスト構造を壊しているケースは非常に多いというのが実感です。
💬 融資担当のホンネ:
「原価率や家賃比率を聞いても把握できていない経営者は多い。数字を知らないまま『いい食材を使っているから』と言われると、返済できるかどうか、正直不安になります。」
改善のポイント:
- メニュー一品ごとの原価率を計算し、粗利が取れる看板商品を強化する
- シフトを売上予測に連動させ、人件費率を月次でチェックする
- 家賃が売上の15%を超えているなら、移転・縮小も検討の余地あり
問題② 低収益モデル——満席でも赤字になる構造
「お客さんは来ているのに、なぜか利益が出ない」という相談は珍しくありません。その多くは、客単価と回転率の問題です。
| よくあるケース | 問題の本質 |
|---|---|
| ランチだけ混んでいる | 夜の売上時間帯が活用できていない |
| 席は埋まっているのに赤字 | 客単価が低すぎて固定費をカバーできない |
| テイクアウトをやっていない | 席数以外の売上チャネルを持っていない |
改善のポイント:
- セットメニューやドリンク提案で客単価を引き上げる
- ディナーやテイクアウトなど、新しい売上の時間帯・チャネルを開拓する
- オペレーションを整理して、回転率を上げる
問題③ 数字管理の不足——「なんとなく赤字」が一番危ない
融資相談でよく遭遇するのが、「毎月の損益を正確に把握できていない」経営者です。帳簿は税理士任せ、日々の判断は「レジの残高」だけ——そういう経営をしていると、黒字のつもりでいた月に支払いが重なって、突然資金が底をつくことがあります。
💬 融資担当のホンネ:
「今月の売上と固定費を聞いたとき、すぐ答えられない経営者には、追加融資の稟議を上げづらい。数字を把握しているかどうかは、信頼感に直結します。」
改善のポイント:
- 損益分岐点売上を計算し、毎日の売上と照らし合わせる
- 原価率・人件費率を月次で確認する習慣をつける
- 簡単なキャッシュフロー表をつくり、3ヶ月先の資金繰りを見通す
「今月の固定費はいくらで、あと何人来れば黒字になるか」——この一つを把握しているだけで、経営の景色はまったく変わります。
問題④ 外部環境とのミスマッチ——時代に取り残される怖さ
かつては繁盛していた店が、気づかないうちに時代遅れになっているケースがあります。健康志向の高まり、デリバリー需要の拡大、SNSによる集客の変化——飲食業界のトレンドは、思った以上に速く動いています。
「昔からこうやってきた」が通用しなくなる瞬間は、突然やってきます。
改善のポイント:
- 定期的に客層の変化を分析し、メニューやサービスを見直す
- 雰囲気・ストーリー・サービスなど、他店との差別化を意識して磨く
- デリバリーやSNS集客など、新しいチャネルを試してみる
業態別・原価率の目安
同じ飲食業でも、業態によって利益の出しやすさはまったく異なります。自分の店の原価率が「業態の標準」と比べてどうか、一度確認してみてください。
| 業態 | 原価率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| ファミレス・食堂 | 30~35%前後 | 大量仕入れでコストを抑えやすい。薄利多売で回転率勝負。 |
| すし店 | 40〜45%(高級店は50%近く) | 魚介類の価格変動と廃棄リスクが大きく、利益管理が難しい。 |
| 居酒屋 | 30〜35% | ドリンクで粗利を確保できる。料理だけでは利益率が低め。 |
| 西洋料理 | 30〜40% | 輸入食材が多くコスト変動に弱い。単価は高いが回転率は低め。 |
| ラーメン店 | 30%前後 | 原価率が低く粗利を出しやすい。回転率が高く収益化しやすい。 |
※業態別原価率は、日本政策金融公庫「創業の手引+」(2024年6月)、同「小企業の経営指標調査」、中小企業庁「中小企業実態基本調査」などの公開資料を参考にしています。実際の数値は地域・店舗規模により異なります。
結局、赤字の飲食店に必要なのは「構造を変える決断」
赤字が続いているとき、「もう少し頑張れば回復するはず」と思いたくなるのは自然なことです。でも、構造的な問題がある限り、頑張り続けるだけでは状況は変わりません。
銀行員として見てきた経験から言うと、再建できた経営者に共通するのは「数字を直視して、構造を変えた人」でした。
✅ 赤字の飲食店がまず確認すべき4つのポイント
- ① 原価率・人件費率・家賃比率は適正か?
- ② 客単価と回転率を上げる余地はあるか?
- ③ 今月の損益分岐点売上を即答できるか?
- ④ 自分の業態は時代のニーズに合っているか?
赤字でも、原因を特定して改善を積み重ねれば、再生できる可能性は十分あります。そして銀行は、数字に基づいて動ける経営者を、ちゃんと見ています。
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