こんにちは。
ワタナベミエです。
「自分のお店を持ちたい」という夢を抱き、フランチャイズに加盟する人は少なくありません。しかし、異業種への安易な参入は大きなリスクを伴います。
今回は、Aさんのケースを例に、フランチャイズ参入のリスクと借金経営の落とし穴について解説します。
夢を持ってフランチャイズに加盟した主婦Aさん
Aさんは子育てが一段落し、かねてからの夢だった「自分のお店」を持つ決意をしました。説明会では「マニュアル完備」「未経験者でも大丈夫」といった心強い言葉が並び、素人でも成功できると思い込んでしまったのです。
しかし、現実はその期待とは大きく異なるものでした。
多額の借金から始まるマイナスのスタート
開業に必要な資金は数千万円にのぼり、Aさんは自己資金がほとんどなかったため、銀行からフルローン(全額借入)で工面しました。開業と同時に多額の借金を背負う「マイナスのスタート」になってしまったのです。
出店は立地・需要・競合などの市場調査を十分に行った上で計画的にすすめたはずでした。しかし現実には、オープンしてみると想定通りにいかないことが多く、売上は計画値を大きく下回りました。
さらに、設備投資の借入額はフランチャイズ本部からの指示に従わざるを得ず、必要以上に投資負担が大きくなりがちです。そのうえ、開業後の運転資金も別途調達しなければならず、資金繰りは一層厳しくなりました。
現場で直面した過酷な現実
「素人でもできる」とはいえ、経営はそう簡単ではありません。人材が集まらず、結局はオーナーであるAさんが長時間店に立ち続けることに。売上は思うように伸びず、休みもなく働く日々が続きました。
焦ったAさんは、少しでも売上を伸ばそうとスタッフに無理な残業やノルマを課しました。しかし、それがかえって従業員の不満を招き、次々と辞めていってしまったのです。人員不足はさらに深刻化し、経営改善どころか悪循環に陥りました。
心身の負担は大きく、家庭との両立も難しくなり、「夢だったはずの独立」が次第に重荷へと変わっていったのです。
結果として、返済負担が重くのしかかり、Aさんはついに資金繰りに行き詰まりました。銀行への返済が滞り、最後は保証協会の代位弁済に至ってしまったのです。
代位弁済に至るまでの流れ
時期 | 出来事 | 影響 |
---|---|---|
① 開業前 | フランチャイズ本部の指示で多額の設備投資のためフルローンを組む | 未経験の事業で過大な借入が発生 |
② 開業直後 | 想定より売上が伸びず市場調査不足が明らかになる | 資金繰りが厳しくなり運転資金の追加調達が必要に |
③ 数か月後 | 長時間労働+人材不足でオーナーが疲弊 | 経営悪化で資金ショートの兆候 |
④ 返済期日 | 売上不足で返済が滞る | 銀行から督促、資金繰りに行き詰まる |
⑤ 最終段階 | 保証協会による代位弁済 | 借金は残り、信用力が大きく低下 |
異業種フランチャイズ参入が失敗しやすい理由
- 経験不足:業界特有の知識や顧客ニーズを理解できない
- 初期投資が過大:借入返済に追われ資金繰りが圧迫される
- 高コスト構造:仕入れルールが決まっていて利益率が低い
- 人材確保の難しさ:現場を任せられる人が集まらない
- 本部依存体質:自分の工夫や改善が反映しにくい
銀行員から見た「経営の盲点」
銀行で資金相談を受けていると、Aさんのように異業種にフルローンで参入し、返済に追われるケースを多く見てきました。多額の借金を背負った状態では、経営が軌道に乗る前に資金が尽きてしまうリスクが極めて高いのです。
本来、融資は「返済できるかどうか」を冷静に検証してから決めるべきですが、フランチャイズ参入時には「誰でもできる」という安心感が先行し、冷静な判断を欠いてしまうことが多いのです。
参入前に考えるべき4つのチェックポイント
- 自己資金の割合:借入に過度に依存していないか
- 業界知識:最低限の経験や勉強を積んでいるか
- 収支計画:返済シミュレーションを現実的に行っているか
- 出口戦略:失敗した場合にどう対応するか
まとめ:甘い言葉に潜むフランチャイズのリスク
Aさんのように「夢を叶えるはずが、借金だけが残ってしまった」というケースは珍しくありません。フランチャイズ自体が悪いというのではなく、異業種のフランチャイズ参入は、安定的に見えて実はリスクが高く、借金経営に追い込まれやすいビジネスモデルです。
参入を検討する際には、「誰でもできる」という言葉に流されず、冷静に数字と現実を見極めること。これこそが、経営者に求められる視点であり、経営の盲点を回避するための第一歩なのです。
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