リスケはなぜ長期化するのか|業績が改善しない会社に共通する現実

融資返済

「リスケをすれば、いったんは楽になる」。
資金繰りに窮した場面で、そう考える経営者は少なくありません。 実際、元金返済を止めれば、目先の資金繰りは一時的に落ち着きます。

しかし実際には、リスケをきっかけに業績が改善し、 数年で正常化できた会社は、決して多くないという現実に行き当たります。 むしろ、リスケを続けながら年数だけが積み上がり、 いつの間にか「それが当たり前」になってしまうケースの方が目立ちます。

銀行員として長年リスケに関わってきた立場から、リスケが形骸化していく構造と、 それでもなお「意味のあるリスケ」に変えるためのヒントを、整理してみたいと思います。

結論:リスケ(返済条件の緩和)が長期化しやすい最大の理由は、返済を猶予することが目的化し、事業そのものが変わらないまま時間だけが過ぎてしまうからです。

リスケは本来、会社を立て直すための「猶予=準備期間」です。しかし融資の現場では、その時間が何のためのものか整理されないまま、数年、場合によっては10年近く続いてしまうケースも珍しくありません。

なぜリスケは形骸化しやすいのか

リスケの相談は、多くの場合「資金繰りが限界に近い」という切迫した局面で出てきます。重要なのは、リスケの成否は返済条件そのものではなく、その後に事業が変われるかどうかにかかっている点です。

元金返済を止めても資金繰りが改善しない

顧問税理士などからの助言を受けて「当面1年間、元金返済を止めれば落ち着くはずだ」と考える経営者は少なくありません。しかし実際には、返済を止めても資金繰りが思ったほど楽にならないケースが多く見られます。

理由は単純で、売上、粗利、固定費といったお金の流れそのものが変わっていないからです。返済が軽くなった分、一時的に資金繰りは楽にはなりますが、事業の収益力が弱いままだと、ほどなく「また苦しい」という状態に戻ってしまいます。

経営改善計画が早い段階で現実とズレる

リスケに合わせて経営改善計画を作成するケースは多いものの、初年度から計画と実績が乖離し、そのまま修正されないことも珍しくありません。

ここで起きているのは能力不足というより、値上げや不採算事業の整理、事業縮小といった「痛みを伴う決断」が先送りされ、「希望の数字」だけが残ってしまう状態です。計画が経営の道具ではなく、手続きを通すためだけの書類になった瞬間、リスケは支援というより延命に近づいていきます。

返済を止めれば何とかなるという誤解

リスケによって返済が軽くなると、「これで何とかなる」と感じてしまう経営者もいます。しかし、返済を止めただけで売上が増えるわけではありません。

むしろリスケ中は、新たな運転資金の支援が限定的になる場面もあり、結果として少額弁済から抜け出せない構造が固定化しやすくなります。返済を止めること自体が、次の一手を生むわけではないのです。

事業の弱さが残ったまま、時間だけが積み上がる

銀行員の目線で見ると、リスケが長期化しやすい会社には、事業面で共通する課題が見えます。

商品やサービスに魅力がなく売れていない、価格決定権が弱く採算の合わない仕事でも受けざるを得ない、取引条件の交渉ができず利益率が上がらない、固定費が重く少しの売上減少で赤字になる――。こうした構造が変わらないままでは、返済条件を変えても業績が改善しにくいのは当然です。

銀行員が感じるジレンマと、理解不足のまま始まるリスケ

銀行員の立場から見ると、「返済条件を変えたとしても、短期間での改善は難しそうだ」と感じる会社もあります。それでも、経営者から「立て直したい」「今は本当に苦しい」と申し出があれば、銀行は一旦はその要望を受け止め、検討のテーブルに乗せざるを得ません。

銀行は金融機関であると同時にサービス業でもあります。顧客がリスケを希望する以上、リスケの意図をしっかりと理解しているか否かを問わず、まずは対話の場を持つ必要があるのが現実です。

ただ問題はその後です。銀行としては経営者と面談を重ね丁寧に説明しますが、経営者自身がリスケの意味を十分に理解しないまま始まるケースほど、結果が出にくい。頭では分かったつもりでも腹落ちしていないままでは、日々の意思決定は変わらず、経営改善計画と実績の乖離が早い段階で広がっていきます。

長期化すると、責任感が薄れリスケが「日常」になる怖さ

リスケが数年続くと、少額返済が当たり前になり、「返済はしている」という感覚だけが残ります。完済まで何十年もかかるペースであっても、その現実を直視しなくなっていく。

会社の二代目社長が「借金は先代がつくったもの」と距離を置いたり、高齢の経営者が「あと数年で完済できる」と根拠の薄い見通しを語ったりする場面もあります。ここで必要なのは誰かを責めることではなく、数字で現実を共有することです。

リスケを「意味のある時間」にするためのヒント

リスケが形骸化しやすいのは事実ですが、手を打てる余地がゼロだとも思いません。ただし、意味を持たせるには条件があります。

  • 最初に「このリスケの時間を使って、何をどうやって変えるのか」を明確にする
  • 事業を続ける前提だけでなく、縮小・撤退もあらゆる可能性を含めて考える
  • 完済までの年数を数字で共有する
  • 銀行と「延長」ではなく「出口」の話をする

立派な計画よりも、小さくても確実に変える行動を積み重ねた会社だけが、リスケを次の段階につなげています。

まとめ:リスケが長期化するのは、制度の問題ではなく、事業と行動が変わらないまま時間が過ぎるからです。

リスケはただ事業の見通しもなく続けるためだけの制度ではありません。会社と銀行が同じ現実を見て、次の判断をするための準備期間です。その時間をどう使うかが、すべてを分けます。

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