こんにちは。ワタナベミエです。
「数字の実績は支店トップクラス。だけど、気に入らないことがあるとカッとなってわめき散らす」。
どこの職場にも、こんな人が一人はいるのではないでしょうか。
上司が注意しても直らず、周囲も「数字を取ってくるから」と見て見ぬふりをしてしまうタイプです。
今回は、銀行の現場で実際に見てきた「問題児エース」が、なぜ支店全体のリスクになるのか、そして そういう人に振り回されないための心得についてお話しします。
数字が取れるから許される?その違和感の正体
銀行は数字の世界です。融資残高、収益、手数料など支店の成績はあらゆる数字で評価されます。
そのため、短期的には「数字を持ってくる人」が重宝されやすく、
多少振る舞いに難があっても目をつぶる空気が生まれがちです。
短期的にはヒーロー、長期的にはリスク要因
問題児エースの典型パターンは、次のようなものです。
- 営業力はあるので融資や預金取引を取ってくる
- 自分の思い通りにならないと、すぐキレて声を荒らげる
- 上司に注意されても、反省が続かず同じことを繰り返す
短期的には支店の数字に貢献しているように見えますが、長い目で見ると 職場の空気を悪くし、周囲の人のやる気を削ぐ存在になります。
特に融資のような慎重さが求められる業務では、冷静さを欠いた対応は、 顧客対応のトラブルやコンプライアンス事故の火種にもなりかねません。
自己中心的な行員が融資現場にもたらす怖さ
自分の思い通りにならないことがあるとわめき散らす行員は、感情に振り回されるため、次のような傾向があります。
- 顧客に対しても好き嫌いがあり、気の合わない顧客との接点を避けがち
- 気分にムラがあり、冷静な判断ができない
- 自分のやり方が一番と思い、他人のアドバイスに耳を傾けない
- 人の意見を聞き入れることが敗北のように感じてる
- 自分に都合の良い情報だけを上司に報告しがち
こうした積み重ねは、見えないところで支店の信用をじわじわと削ります。
それでも「数字さえ取ってくるから」と放置してしまうと、支店全体で
「行動の質より数字が優先される」危うい風土が染みついていきます。
銀行組織から見た「問題児エース」の末路
若いうちは、勢いと行動量で数字を作り、「あいつはやる」と評価されることもあります。
しかし、銀行員人生は長距離走です。30代後半〜40代以降になると、評価の物差しが変わります。
評価が変わるのは30代後半から
年齢が上がるにつれて、銀行が重視するのは次のポイントです。
- 顧客対応の品格・安定感
- コンプライアンス意識の高さ
- 部下や後輩への影響力(良い意味でのロールモデルかどうか)
- 支店全体の雰囲気を良くするか、悪くするか
ここで問われるのは、単発の数字ではなく、「行動の質」と「再現性」です。
わめき散らすことで周囲が引いてしまうタイプは、この段階で評価が頭打ちになることが多いのです。
昇格が止まり、居場所が静かに変わっていく
実務の現場では、問題児エースは次のような流れをたどりがちです。
- 若手〜中堅の頃は、数字で何とか評価される
- 徐々に「扱いにくい人」として支店内で認識される
- 管理職候補として見られなくなり、昇格が止まる
- やがて、本部の後方部門や「目立たないポジション」に異動していく
本人は「自分は数字を持ってきたのに、正当に評価されない」と感じているかもしれません。
しかし、組織全体から見ると、
「行動の質が低く、支店の信用や雰囲気を損ねる人」には重要な役職を任せられないのが現実です。
問題児に振り回されないための3つの心得
では、同じ職場でこういうタイプと一緒に働く人たちは、どう自分を守ればよいのでしょうか。
ここからは、現場の銀行員として私が大切だと思う「振り回されないための心得」をお伝えします。
① 距離を置き、同じ土俵に乗らない
怒りやすい人と正面からぶつかるほど、こちらが消耗します。
職場でできる現実的な対策は、とてもシンプルです。
- 業務連絡は必要最小限、簡潔に伝える
- 感情的な言動には反応しすぎない
- 「正しさ」を証明しようとして、無理に議論で勝とうとしない
相手のペースに乗らず、波風を立てない「距離感」を自分で決めることが、心を守るうえでとても大切です。
② 組織は“行動の質”で見ていると知る
目の前では「数字を持ってくるから」と甘く扱われているように見えても、
本部や人事は、次のような点をきちんと見ています。
- 顧客からの評判やクレームの有無
- 上司・同僚からの信頼度
- 支店の雰囲気に与える影響
つまり、「行動の質」や「周囲との関係性」も、静かに評価の対象になっているということです。
そう理解しておくと、「なんであの人だけ…」という不公平感に飲み込まれにくくなります。
③ 自分の仕事の丁寧さを手放さない
問題児を見ると、つい腹が立ったり、同じテンションで言い返したくなることもあると思います。
でも、そこで大事なのは、
「自分の仕事の質まで落とさない」ことです。
丁寧な説明、落ち着いた顧客対応、正確な事務処理、誠実な報告・連絡・相談。
これらは派手さはありませんが、長い目で見て必ず評価される部分です。
問題児に心を乱されるたびに、自分の軸を思い出してみてください。
「私は、きちんと仕事をしている」「自分の信じるスタイルで働いている」と、静かに確認するだけでも、ずいぶん気持ちが楽になります。
それでも「まともな感覚」を手放さないで
銀行は「人の信用」を扱う仕事です。だからこそ、本来大切にすべきなのは、数字だけでなく、その数字を作る行員の姿勢や態度です。
支店内で問題児が許されているように見えるとき、
真っ先にモヤモヤするのは、まともな感覚を持っている人です。
もしあなたが「この状況はおかしい」と感じているなら、その感覚は決して間違っていません。
長い銀行人生の中で、本当に信頼されるのは、
「冷静に、誠実に、安定して結果を出し続ける人」です。
誰かの大きな声や強い態度に押されて、自分の価値観を曲げてしまわないように。
今日も、あなたのペースで、あなたらしく仕事を続けていきましょう。



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