補助金で会社を強くするには、融資と資金繰りの設計が欠かせない
― 銀行員が見た「補助金で資金が尽きた会社」の共通点 ―
「補助金を使って新しい設備を導入したのに、数か月後には資金が足りない」──。
銀行の現場では、そんな相談が少なくありません。
補助金は企業の成長を後押しする制度ですが、うまく使えなければ資金繰りを悪化させることもあります。
銀行員の立場から、現場で見た“補助金の落とし穴”と“正しい併用のコツ”をお伝えします。
結論:補助金と融資は“別モノ”ではなく“同時設計”が必要
補助金はありがたい制度ですが、実際にお金が入るのは事業が完了してからです。
つまり、先に設備代や開発費を支払う必要があり、支払いから入金までの期間に「資金の空白」が生まれます。
銀行としては、補助金を前提とした資金計画を立てる場合、
「つなぎ資金」と「事業開始後の運転資金」を同時に設計することを強く勧めています。
【銀行員の本音】
補助金を活かせる会社は、「補助金をどうもらうか」よりも「補助金が入るまでどう持たせるか」を最初に考えています。
補助金の資金ギャップを理解する
補助金の一般的な流れとして「補助金申請 → 審査 → 採択通知 → 交付申請(交付決定通知) → 補助金事業開始(設備導入の実施・支払いなど) → 精算払請求 → 補助金振込 → 事業化状況報告」という流れです。
事業完了後に補助金が支払われる“後払い制”のため、手元資金を一時的に圧迫します。
特に初めて補助金を利用する企業では、この「支払いと入金のタイムラグ」を見落としがちです。
銀行では、その期間を補う短期融資を「つなぎ資金」として提案することがあります。
【実際にあったケース(業種を一部変更)】
地域ブランドの製造拠点を新設するため、補助金を活用して新工場を建設した会社がありました。
設備や建物に多くの資金を投じ、事業計画上は採択も受け、順調なスタートに見えました。
ところが、実際の運転開始後に問題が発生。
原材料の仕入れや製品出荷のための資金が残っておらず、資金繰りが急速に悪化しました。
設備への投資ばかりに意識が集中し、「補助金が出る=資金は足りる」と誤解していたことが原因です。
こうした例は珍しくなく、補助金の「光」と「影」がよく表れた事例でした。
銀行が見る「補助金+融資」チェックポイント
① 交付決定通知が出ているか?
採択だけではまだ不十分です。
銀行は「交付決定通知」が出てから融資判断を行います。
採択=採用見込み、交付決定=正式確定、という違いを理解しておくことが大切です。
② 資金繰り表で“タイムラグ”を見える化しているか?
銀行は、「いつ支払って、いつ補助金が入るのか」を明示した資金繰り表や資金計画を求めます。
補助金を根拠に融資を出すには、数字の裏付けが欠かせません。
日本政策金融公庫では、公式の資金繰り表テンプレートを公開しています。
資金繰り表(Excel・PDF)|日本政策金融公庫
③ 補助金入金後のお金の流れを明確にしているか?
補助金は、いったん自己資金やつなぎ融資で支払った費用を、あとから補填する“立替払い”が原則です。
したがって、補助金が入金されたら何に使うのかではなく、どの支払いを補うかを明確にしておくことが大切です。特に、つなぎ融資を返済する予定の補助金を別の用途に使うのは絶対に避けるべきです。
【銀行員の視点】
補助金が入ったら、つなぎ融資の返済に充てる──その約束を確実に守れる会社は、銀行からの信頼も高まります。
資金の流れ「つなぎ融資を受ける → 設備の支払い → 補助金入金 → つなぎ融資返済」を管理できる経営者は、次の融資も受けやすくなります。
補助金を“強みに変える”ための考え方
補助金はうまく使えば経営の追い風になりますが、「お金がもらえる」ことだけに意識が向くと逆効果になります。
補助金の目的は、あくまで事業の成長を支える一部であり、資金繰りを支える仕組みの一つです。
補助金を申請するときは、同時に「入金までどう資金を回すか」「入金後にどの支払いを補うか」を考えること。
これが、資金が尽きない会社の共通点です。
信頼できる公的情報源
※本記事は銀行員としての実務経験に基づいて執筆しています。特定の業種・企業を示すものではありません。
※補助金制度の条件・交付手順は年度によって変わるため、最新の公募要領・公式サイトを必ずご確認ください。
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