「赤字を埋めるために500万円を借りたい」
こうした相談を銀行に持ち込む経営者は、決して珍しくありません。
ただ、この言い方をした瞬間に、銀行のスタンスが一気に慎重になるケースがあるのも事実です。
それは、銀行が冷たいからでも、創業したばかりの会社を軽視しているからでもありません。
赤字補填の融資には、貸した後に状況が悪化しやすい構造上のリスクがあるからです。
この記事では、赤字補填の融資は本当に無理なのか、銀行がどこを見て判断しているのかを、現場目線で整理します。
赤字補填でも銀行融資は受けられるのか?
結論
赤字補填でも、銀行融資が「絶対に無理」というわけではありません。
ただし銀行が見ているのは、「赤字を埋めたい理由」ではなく、
①赤字が止まる見込み、②資金の使い道の具体性、③返済の現実性です。
ここが整理されていないと、融資は支援ではなく「問題の先送り」になりやすく、銀行は同意しづらくなります。
新規設立の会社が抱えやすい資金の悩み
これは、事業資金の新規融資の相談に来店した、ある経営者のお話です。
会社を設立したばかりの時期は、社長自身が営業、経理、総務など、ほぼすべての業務を担うことになります。
それにかかる時間や負担は、想像以上に重たいものです。
売上が安定するまでの間、運転資金や人件費の確保に頭を悩ませることも多いでしょう。
また、経営経験や信用力が十分でないため、銀行との融資交渉が思うように進まないケースもあります。
今回の記事は、そうした悩みを抱える経営者の方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。
その資金の用途とは…
ある日、ソーシャルメディアの運営サポートやコンテンツ制作・運用代行を行う会社の社長が、銀行に融資の相談に訪れました。
創業したばかりの会社が事業資金の相談に来店すること自体は、決して珍しいことではありません。
しかし、問題だったのはその資金の使い道でした。
融資希望額は500万円。
業種の特性上、大きな設備投資を必要とするわけでもなく、一般的には多額の運転資金が発生しにくい業態です。
そこで資金の用途を詳しく確認したところ、社長から返ってきたのは次の言葉でした。
「新しい事業を始めたいのですが、人件費を払うと赤字になってしまいます。その補填として資金が必要なんです」
「赤字補填」と聞いたとき、銀行が慎重になる理由
銀行が融資の可否を判断する際、最も重視するのは「返済できる見込みがあるかどうか」です。
事業投資によって利益を生み、その利益から返済できるのであれば、審査は前向きに進みます。
しかし、赤字補填の資金には、銀行から見ると次のようなリスクがあります。
👉 利益を生む計画が明確でない
赤字を埋めるだけでは、その資金を元手に利益が生まれる保証がありません。
👉 資金が尽きた後の展開が見えにくい
500万円を使い切った後、さらに追加資金が必要になる可能性が高くなります。
👉 返済の原資が不安定
新しい事業が計画通りに進まなければ、返済そのものが難しくなります。
銀行の役割は、貸したお金を回収することです。
そのため、赤字補填に使われる資金には、どうしても慎重にならざるを得ません。
融資が通りやすいケース/難しいケース
融資が通りやすいケース
- 赤字の原因が整理され、すでに止める手が打たれている
- 資金使途が「赤字補填」ではなく、具体的な支払い内容まで落ちている
- 数か月後の収支改善を数字で説明できる
- 返済開始時期や返済額が現実的に設計されている
難しいケース
- 赤字の理由が「景気が悪い」「忙しい」といった抽象論にとどまっている
- 使途が「とりあえず運転資金」となっている
- 資金投入後も赤字構造が変わらない
- 借換えや追加融資を前提とした話になっている
赤字でも融資を前向きに進めるための考え方
赤字補填という言葉そのものが問題なのではありません。
重要なのは、その資金が事業を立て直すための一時的な手段になっているかです。
例えば、
📌 売上を伸ばすための具体的な施策がある
(マーケティング強化、販路拡大など)
📌 一定の自己資金を確保している
(資金余力は計画性の裏付けになります)
📌 個人事業時代の実績や返済履歴がある
こうした材料がそろっていれば、銀行も「支援」として融資を検討しやすくなります。
まとめ
赤字補填の融資が難しいのは、銀行が厳しいからではありません。
貸した後に立て直せなかったケースを、数多く見てきたからです。
赤字でも融資が前に進む会社は、
- 赤字が止まる説明
- 資金の使い道の明確さ
- 返済の現実性
を、感情ではなく構造で示しています。
「赤字だから無理」と決めつける前に、
どう見せれば銀行にとって“支援”になるのかを整理することが、融資交渉の第一歩です。
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