銀行は「数字」で会社を評価しますが、同じくらい「言葉」で経営者を見ています。
面談中の何気ない一言が、「支援したい社長」か「距離を置きたい社長」かを分けることがあります。
本記事では、現場の銀行員が実際に「この先は厳しいかもしれない」と感じた“信頼を失う口ぐせ”を5つ取り上げ、どう言い換えれば信頼を保てるのかを具体的に解説します。
「経理担当から聞いてください」「税理士に全部任せています」
最もよく聞く言葉の一つです。この一言が出た瞬間、銀行員の頭の中で“黄色信号”が灯ります。
経理や税理士が数字をまとめるのは当然ですが、銀行が知りたいのは社長自身が自社のお金の動きを把握しているかという点です。
とくに「税理士が何もしてくれない」と嘆く社長ほど、実は自社の数字を見ていないケースも少なくありません。銀行員の目には、「経営の舵を他人に預けている」ように映ります。
「税理士に整理はお願いしていますが、資金の流れは毎月自分でも確認しています。
現在の手元資金は、固定費のおよそ3か月分です。」
「売上が落ちたのは、銀行さんがアドバイスをくれなかったからです」
実際のリスケ(返済条件変更)の相談で耳にした言葉です。銀行は資金を貸す存在であって、売上を作る仕組みまで担う機関ではありません。
もちろん金融面での助言や取引先紹介を行うことはありますが、「経営の舵を銀行に委ねる」姿勢では支援のしようがありません。
「売上が落ちた要因を社内で整理しています。
同業の動向や金融面で改善できる点があれば、御行のご意見も伺いたいです。」
「なぜ借りられないのか、教えてくださいよ」
融資謝絶の場面で、納得がいかず同じ質問を何度も繰り返されることがあります。
銀行が融資を断る主な理由は、現在の財務では返済の見通しが立たない、あるいは赤字が恒常化し、妥当性のある経営改善計画が提示されないためです。
「現状ではどの部分を改善できれば、融資の見通しが立ちますか。
必要な数字や資料の基準を教えてください。」
「他の銀行ならもっといい条件を出してくれますよ」
条件交渉のつもりでも、言い方次第で“取引の駆け引き”にしか聞こえません。相手の足元を見る態度は、対等なパートナーシップから最も遠い位置にあります。
「銀行は公務員のように黙って貸すもの」という誤解も見受けられます。確かに銀行の仕事には公共性がありますが、銀行にも従業員とその家族がいて、地域の事業に融資したり再建を支援したりするには、銀行自身が健全に利益を上げ、リスクに耐えられる体力が不可欠です。公共性と収益性は対立ではなく、地域を支える両輪です。
こうした基本的な相互理解を欠いたまま「相手を利用する」姿勢で取引を続けると、やがて社員・取引先・銀行といった“人の縁”が細っていきます。信頼を取引材料にする人は、最後に取引そのものを失う——銀行現場の実感です。
「他行にも相談していますが、御行の方針を伺ったうえで総合的に判断したいです。」
「この決算ならいくら借りられますか?」
決算書を差し出して金額の上限だけを尋ねる姿勢や、新規融資の直後に「次はいつ・どれだけ借りられるか」を軽い調子で聞く姿勢には、“借入”が目的化している違和感が生まれます。
資金は目的を実現するための手段であってゴールではありません。「借りること」が主語になった瞬間、会社は数字に追われはじめます。
「この決算を踏まえて、次の投資計画や運転資金の設計を相談したいです。
必要資金の根拠と返済の見通しを一緒に確認させてください。」
まとめ:信頼は「結果」よりも「姿勢」で築かれる
- 現状を隠さず、数字を自分の言葉で説明する
- 他責にせず、原因と対策をセットで語る
- 資金は目的達成の手段であり、“返済の見通し”まで語ることができる
銀行員が見限るのは、赤字の会社そのものではありません。責任を持たない姿勢です。この3点が伝わる限り、銀行は必ず耳を傾けます。
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