こんにちは、ワタナベミエです。
銀行の支店長といっても、実際にはさまざまなタイプが存在します。大きく分けると「本部追従型」と「現場配慮型」の2つにの型に分けられます。その中にさらに細かいタイプがあり、性格や行動パターンが異なります。
経営者が自分の担当支店長のタイプを見極め、その特徴に応じて適切に“支店長を使い分ける”ことが融資交渉を有利に進めるカギとなります。
以下では支店長を6つのタイプに分けて、それぞれの攻略ポイントを整理します。
本部追従型
本部追従型の支店長は「本部の意向を最優先する」という点で共通しています。ただし性格によって対応はさまざまです。
① 横文字志向タイプ
実例・特徴:会議では「アライアンス」「シナジー」など横文字を並べ立てるが、実務面の質問には答えられない。お客さまに対しても「マーケット的には強い案件ですね」と抽象的なコメントが多い。プライドが高く損得勘定が強い。
攻略法:このタイプは体裁を重視するため、見栄えの良い企画書や要約スライドを用意すると効果的です。また、「銀行にとっても収益性が高い案件です」と銀行側のメリットを強調し、支店長のプライドを満たす言葉を添えると協力的になります。
② 迎合気弱タイプ
実例・特徴:経営者が「この金額でないと困る」と強く主張すると「わかりました、なんとかします」と返事をし、現場の状況や背景を整理せずに、本部にそのままお客さまの言葉を伝えるが、すぐに跳ね返されてしまう。お客さまには強く言えないが、本部にも弱い。自分の意見はなく、外部圧力に弱い。強い口調や自信のある主張に押されがち。波風を立てたくない。
攻略法:堂々と自信を持って希望条件を伝えつつ、裏付け資料も(資金繰りや利益計画)を提示して本部にも通用する内容にしておくことが必要です。「強気+根拠」で押すと効果的です。
注意点:このタイプの支店長はどうしていいか分からずに、顧客と本部の双方の板挟みになることが多いので、進捗管理は必須。
③ 腰掛け逃げ切りタイプ(本部帰り)
実例・特徴:本部経験が長い。「あと2年支店にいれば本部に戻れる」と考え、面倒なことは避けたくて、お客さまとの面談を極力避ける。融資相談も担当者任せで、実際に支店長に会える機会が少ない。「任期を穏便に済ませて、早く本部に戻りたいオーラ」が滲み出ている。
攻略法:このタイプは手間を嫌うため、フォーマットに沿った完璧な資料を用意し「手間をかけない顧客」として印象づけることが重要です。資料は融資稟議書にそのまま添付できるような体裁に整えると、本部に申請しやすくなります
一言:「手間をかけさせない顧客」と認識させると最速で本部に回す。
④ 基準至上タイプ
実例・特徴:「本部の基準に合わないのでダメです」と一点張り。お客さまが何を言っても譲らない。返済比率や担保評価など、内部規定から外れる案件は取り合わない。内部組織に弱い。基準外は原則NO。「本部がダメと言ったので」が口ぐせ。
攻略法:本部基準に“完全適合”させるしか方法はありません。例えば、「返済比率を改善するために自己資金を追加する」「担保評価を補完する資料を添える」など代替案や調整策を提示することで突破口が開けます。
②との違い:②は顧客に迎合、④は本部に迎合。アプローチの矛先が逆。
現場配慮型
現場配慮型の支店長は「お客さまを助けたい」という思いを持っています。ただし本部に逆らう力は弱く、材料がなければ動けません。ここでもタイプごとの違いがあります。
⑤ 本物優秀タイプ
実例・特徴:お客さまのためになることを正しく見極める希少な支店長。数字だけでなく、経営者の人柄や事業の将来性を見抜き、本部に掛け合ってでも案件を通そうとする。昔の「骨のある支店長」に近い存在。
攻略法:このタイプに小細工は不要です。誠実に現状を説明し、弱点も含めて情報を開示し改善計画を数字で示すことで信用されます。もし出会えたらラッキーだと思い、正攻法で勝負しましょう。
⑥ 共闘志向タイプ
実例・特徴:「お客さまを助けたい」という気持ちは強く、前向きに動こうとする支店長。ただし思考の深さや知恵はあまりなく、本部への説明では突っ込まれると詰まってしまう。熱意はあるが、本部に対抗できる“武器”が不足しているタイプ。
攻略法:経営者が「本部説明キット」を用意(資金繰り表、改善数値目標、投資採算/回収シミュレーションの3点セット)。さらに進捗報告の頻度・方法まであらかじめ取り決めて、支店長の不安を軽減する。そうすれば「一緒に戦ってくれる相手」として心強い味方にできる。
銀行が必ず見る3つのチェックポイント
- ① 数字の裏付け:返済原資となる営業キャッシュフローは十分か?(例:毎月の返済額を上回る資金が残るか)
- ② 事業計画の筋道:売上や利益をどう伸ばし、改善するかが具体的か?(例:新規顧客開拓やコスト削減の数値目標)
- ③ 投資のメリット:会社に加えて銀行にとってもプラスになる内容か?(例:会社の成長で返済の懸念がなくなり、銀行も安心して貸せる=信用が高まる)
あなたの支店長はどのタイプ?診断チェックリスト
当てはまる項目をクリックして攻略法をチェックしましょう。
- 人当たりが良く、愛想もいい。やたらとリアクションが大きい。体裁やプレゼン重視(横文字志向タイプ)
- 気が弱く自分の意見を言えない。社長の圧力に同調しがちだが本部にも弱い(迎合気弱タイプ)
- 視線を合わせようとしない。お客さまとの接点を避けて任期を穏便に過ごしたい(腰掛け逃げ切りタイプ)
- 話がつまらない。数字の話だけしておけばいいと思っている。「基準に合わないので不可」と即答しがち(基準至上タイプ)
- 物事の理解が早く応用力がある。コミュニケーション能力が高く相手に合わせた説明ができる。数字と将来性を丁寧に読み、虚飾を嫌う(本物優秀タイプ)
- 一生懸命で助けたい気持ちはありそうだが、材料不足で悩みがち(共闘志向タイプ)
支店長タイプ別 使い分け早見表
型 | タイプ | 弱点 / 動機 | 攻略の武器 |
---|---|---|---|
本部追従型 | 横文字志向タイプ | 体裁・評価を重視。横文字で飾るが中身がない。 | 要約スライド(1〜3枚)+銀行メリット明記 |
迎合気弱タイプ | 外(顧客)に弱く、本部に押し返されやすい。 | 堂々主張+裏付け資料+想定問答 | |
腰掛け逃げ切りタイプ | 手間回避。任期を穏便に済ませたい。 | フォーマット準拠の“手離れ良い”資料一式 | |
基準至上タイプ | 本部基準を絶対視。「NOはNO」で曲がらない。 | 基準完全適合+代案(借入圧縮/自己資金) | |
現場配慮型 | 本物優秀タイプ | 虚飾を嫌い、顧客本位。数字と将来性を重視。 | 情報開示+KPI・資金繰りの整合性 |
共闘志向タイプ | 助けたいが材料不足。本部説明に自信がない。 | 説明キット(資金繰り・事業計画・銀行メリット)+進捗報告 |
結論:どのタイプにも通用するのは「支店長が納得できて、本部に説明しやすい案件設計」です。書類の体裁を整えるだけではなく、審査の論点に沿った数値とロジックで勝ちに行きましょう。
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