リスケが長引く会社に起きている「5つの迷走構造」|銀行の現場から見える現実

融資返済

リスケが長期化する会社の多くは、能力や努力が足りないのではなく、「考え方の置きどころ」が少しずつズレていくことで、結果として迷走してしまう構造を抱えています。
経営者は合理的に判断しているつもりでも、その言動が少しずつズレていくと、業績改善からは遠ざかっていく——。
これは、私がリスケの現場で出会う「よく見る構図」です。

ここでは、リスケが長期化しやすい会社に共通して現れる5つの言動と、銀行目線での受け取り方、そして「小さな修正の一手」を整理します。
誰かを責めるためではなく、迷走を止めるための“構造の見直し”として読んでいただければと思います。

① 計画は増えていくが、振り返りがない

――「失敗の言語化」を避けてしまう構造

このタイプの経営者は、計画を立てること自体は嫌いではありません。
むしろ真面目で、「次こそは」と考えていることが多い。

ただし、計画と実績が乖離した理由を掘り下げる段階になると、話が前に進まなくなります。

なぜか。
それは多くの場合、「できなかった理由」を言語化することが、自分の判断ミスや限界を直視する行為になるからです。

銀行側が求めているのは犯人探しではありません。
たとえば、

  • 前提が甘かったのか
  • 数字の読みが違ったのか
  • 実行段階で止まったのか

しかし経営者側には、それが「責められる作業」に感じられてしまう。
結果として、振り返りを飛ばし、新しい計画で上書きするという行動になります。

銀行から見ると、「計画を作る力はあるのに、学習が積み上がっていない会社」に映ります。
もっと端的に言えば、

「前の計画が達成できなかった理由を説明できないまま、次の計画だけが増えている会社」に見える。

これは「経営改善に向き合っている」より、「失敗の説明を避け続けている」という印象に近いのです。

修正のヒント(小さな一手)

新しい計画を作る前に、「前回のズレを1つだけ」書いてください。立派な分析は不要です。
例)「粗利が想定より取れなかった」「外注比率を下げられなかった」
そのうえで「次は前提をこう置き直す」と言えれば、銀行の受け取り方は大きく変わります。

② 資料は整うが、行動が変わらない

――「見える化」と「経営」が切り離される瞬間

このタイプは、数字をまとめること、説明資料を作ることが上手です。
外形的には「管理できている会社」に見える。

ただ、資料が意思決定や日々の行動に使われていない
たとえば、

  • この数字を見て、何をやめるのか
  • どこに手を打つのか
  • いつまでに何を変えるのか

そこまで落とし込まれないままだと、資料は“ただの資料”でしかありません。

経営者本人の感覚では「ここまで整理したのだから、やっている」つもりになっている。
でも実際には、数字が行動に変換されていない

銀行側から見ると、資料作りや説明は上手いが、会社の経営判断に活かされていないように見えます。

修正のヒント(小さな一手)

資料の最後に、「この数字を見て、やめること/続けること」を1つずつ書いてください。
例)「広告費は止める」「高粗利メニューを強化する」
数字を「見せるためのもの」から「判断する道具」に考え方を変えると、銀行との対話は前に進みます。

③ 財務は専門家の仕事だと思っている

――「経営の主体」が無意識にズレていく

このタイプの経営者は、本業への自負が強く、仕事熱心です。
ただし、「数字は苦手」「専門家に任せるもの」という意識が強い。

結果として、財務や事業計画が自分の意思決定と切り離された“別物”になります。

税理士や会計士が作った計画は、形式としては正しい。
しかし、それを「自分がどう経営するか」という視点で咀嚼していない。

銀行から見ると、「誰の計画なのか分からない」状態です。

たとえば「この前提が崩れたらどうしますか」と聞かれて、
「税理士と相談します」しか出てこない会社は、銀行から見ると 「誰が責任を持って舵を切るのか分からない会社」に見えます。

もう一段踏み込むと:
本業を頑張っていることと、会社を立て直せるかどうかは別問題です。
数字の判断を他人に預けたままでは、リスケ中に必要な「即断」はできません。

修正のヒント(小さな一手)

財務を全部理解する必要はありません。まずは自分の判断基準を1つ決めてください。
例)「手元資金が○ヶ月を切ったら固定費削減に手を付ける」「売上が○%落ちたら不採算部門を止める」
“自分の言葉でルール化”すると、計画は経営するための手段になります。

④ 非現実的な希望に逃げる

――現実を直視し続けることへの疲労

この言動の背景には、長期リスケによる精神的な消耗があります。
数字を見れば厳しい状況は明らか、現実的な改善策は地味で時間がかかる。
そこで人は、一気に解決してくれる話に惹かれます。

  • 会社を売却できれば
  • ヒット商品が出れば
  • 一気に返済できれば

本人は「前向きな話」をしているつもりです。
しかし、根拠が整理されない希望は、ただの願望でしかありません。

銀行側には、「現実の話を避けている」「時間を稼いでいる」そう見えてしまいます。

「会社を売却したいから銀行で買い手を見つけて」とか「開発中の新商品が当たれば返せる」——
こうした話は現実的とは言えず、時期・金額・失敗した場合の策が出てこないと、銀行は 「現実の数字の話を避け始めた」と判断します。

修正のヒント(小さな一手)

希望の話をするなら、「当てが外れた場合の策」をセットにしてください。
例)「1年後に完済できなければ、個人の財産で返済する」「1年以内にヒットしなければ不採算部門は撤退する」
そうすれば、希望が“逃げ道”ではなく“現実的な選択肢”に変わります。

⑤ 資金を溜め込むことで安心しようとする

――不安の正体が視覚化されていない

このタイプは、不安が非常に強い。
手元の運転資金が「いくらあれば足りるのか」「どこまで減らしていいのか」が分からないため、
「多ければ多いほど安心」という判断になります。

しかし、必要資金の輪郭が見えていない状態での手元資金温存は、利息の負担を通じてじわじわ体力を奪う。
銀行から見ると、「守ろうとして、かえって削っている」構造です。

「現金は減らしたくない」と言いながら、毎月確実に利息だけは流出している。
銀行から見ると、守っているつもりの現金より、失っている体力の方が大きい状態です。

さらに踏み込むと:
必要運転資金を把握していない会社は、返せるかどうか以前に、経営判断の基準を持っていないと見られます。

修正のヒント(小さな一手)

まずは最低限必要な運転資金(○ヶ月分)を決めてください。線引きができれば「残りは余剰」と整理でき、繰上返済も“お金を失う行為”ではなく“経営を軽くする行為”に変わります。
金利負担が軽くなるだけで、次の一手に回せる体力が戻りやすくなります。

まとめ:迷走の原因は「努力不足」ではなく、認識のズレを放置すること

リスケが長期化する会社は、最初から「やる気がない」わけでも、「能力がない」わけでもありません。
ただ、ズレを直さないまま前に進むことで、結果として迷走の構造が深まっていきます。

だからこそ必要なのは、大きな改革よりも、小さな修正です。
たとえば「ズレを1つだけ言語化する」「数字から判断を1つ決める」「希望とセットでうまく行かなかった場合の策を出す」。
その一手が入るだけで、銀行との対話は“延命”から“再建”へ近づきます。

※この記事は、リスケ支援の現場でよく見かける傾向を一般化して整理したものです。個別の事情や背景によって最適解は変わります。

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