銀行が資金繰り表を求める本当の理由
─ 苦手意識をなくす“経営の見える化”という視点
銀行から「資金繰り表を出してください」と言われて、正直うんざりしたことはありませんか?
どうせ銀行のためでしょ、こっちは日々の仕事で精一杯なのに──そんな声を何度も聞きました。
でも実は、資金繰り表を作れるかどうかが、会社を守る力の差になります。
銀行員はそこを、痛いほど知っています。
銀行が資金繰り表を求めるのは「数字」ではなく「現実と向き合う力」を見るため
決算書は過去を映す“静止画”。
資金繰り表は未来を描く“動画”です。
銀行が気にしているのは、黒字・赤字の結果ではなく、「来月の支払いをどう乗り切るか」という、社長の判断力。
だからこそ、「資金繰りを作る」という行為そのものが、経営の姿勢を映す鏡になります。
資金繰りを作れない会社ほど、危機の初動が遅れる
資金ショートは、突然起こるわけではありません。
多くの場合、数か月前から兆候が出ています。
入金のズレ、外注費の膨張、返済の重なり──どれも表を見ていれば気づける話です。
でも、「感覚でやっているから大丈夫」という会社ほど、危機の初動が遅れます。
実際、私の経験でも「ギリギリになって相談に来た会社」は、すでに打てる手が限られていました。
資金繰り表を作ることは、“気づく力を鍛える”経営訓練にもなるのです。
実例:ノート1冊で信頼を勝ち取った製造業の社長
ある地元の金属加工会社の社長。創業30年、職人気質でパソコンは苦手。
「資金繰りなんてオレの頭の中にあるよ」と笑っていました。
ところがある年、主要取引先の支払いが1か月遅延。
給与の支払いに不安が出た時、初めて本気で資金繰り表を作り始めました。
使ったのは大学ノート。
ページの左に入金予定、右に支払予定を手書きで書き込み、週ごとの残高を赤ペンで追記。
3か月後、融資の相談に来られた時、そのノートを見せてくれました。
私は思わず「これ、最高の資金繰り表ですね」と言いました。
数字の精度よりも、お金の動きを自分の言葉で説明できる。
その姿勢に、こちらも「この会社なら支えることができる」と感じました。
その社長はその後も毎週ノートを更新しています。
銀行は“帳尻合わせ”より“手当ての速さ”を評価する
資金繰りは、正確さもさることながらスピードが大事です。
銀行が融資判断で重視するのは「どこで資金のズレに気づいたか」「そしてどう動いたか」。
返済が厳しくなる前に相談してくる社長は、それだけで信頼されます。
逆に、資金ショート直前まで放置していた会社は、いくら決算が黒字でも“危ない”と判断されます。
資金繰り表を作ることで、「早く気づいて、早く対策を打てる」会社になる。
それが融資判断の際の安心材料になります。
「資金繰り表」は、経営者の頭を整理するツール
経営者の中には、「資金繰り表を作るのは事務仕事」と思っている方がいます。
でも実際は、頭の中の経営判断を“見える化”する経営ツールです。
「次の入金はいつか」「税金はいつ支払うか」「ボーナスと返済が重なる月は?」
これらを一度書き出すだけで、驚くほど判断が早くなります。
銀行面談での一言が変わる
「△月第3週に残高が足りなくなりそうなので、仕入の支払いを調整しています。
念のため短期枠のご相談もさせてください。」
この一言があるだけで、銀行の印象はまるで違います。
資金繰りを作れる社長は、問題を「一緒に考えられる相手」になるのです。
銀行が資金繰り表を求めるのは、会社を縛るためではありません。
「社長が未来を見据えて素早く動ける会社か」を見極めるため。
お金の流れを理解し、行動で示せる経営者は、数字以上に強い。
その力をつける最初の一歩が、「資金繰り表をつくる」ことです。
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