こんにちは。ワタナベミエです。
銀行融資を検討している経営者から、「保証協会って何ですか? 銀行とどう違うんでしょうか?」という質問をよく受けます。しかし、その仕組みや役割はわかりにくく、初めて利用する経営者にとっては「なぜこんなに資料を求められるのか?」 「保証料って何?」 と疑問がつきないもの。
今回は保証協会とは何か/保証料の考え方/審査の基準/資料が多い理由/プロパー融資との違いに加え、返済が難しくなった場合の代位弁済(代弁)の基礎まで、保証協会の仕組みを初めての方にもわかりやすく整理して解説します。
保証協会とはどんな組織か?
信用保証協会は、各都道府県に設置された公的な保証機関。中小企業や個人事業主が銀行などからお金を借りる際に、公的保証人となってくれる存在です。
銀行が企業に融資をする際に、どうしても「貸したお金が返ってこないリスク」を心配します。大企業であれば財務基盤が強く、担保も豊富なので銀行は安心して貸せますが、中小企業や個人事業主の場合はそうはいきません。
ここで登場するのが保証協会です。保証協会が「この会社が返せなくなったら、代わりに返済します」と保証することで、銀行は安心して融資できるようになります。保証料とはなにか?
保証協会を利用する場合、融資を受ける会社は保証協会に「保証料」を払わなければいけません。これは、保証人になってくれる代わりに払う保険料のようなものです。
保証料は一般に融資額×保証料率×借入年数(月数)/12×係数(係数は分割返済の場合)で算出され、保証料率は企業の財務内容や財務以外の要因なども考慮されます。目安は年0.5%~2.0%程度です。
計算イメージ:
借入額1,000万円・期間5年・保証料率年1.0%・分割係数0.55→ 保証料の概算は約27.5万円です。 分割返済の場合は分割係数(分割返済による返済の進捗を考慮した掛目のこと)をかけますが、返済回数や均等・不均等返済によって係数が変わります。
「ただでさえ資金が必要なのに、さらにお金を取られるのか」と感じる方もいるでしょう。しかし、保証協会が保証をしてくれるからこそ、銀行は無担保や保証人なしで融資を出せるケースもあります。結果的に、保証料を払う価値は十分にあるのです。
保証協会は何を基準に審査しているのか?
銀行の審査に加え、保証協会も「この会社に保証してよいか」を審査します。つまり、二重の審査が行われます。
保証協会の審査では、主に以下の点が見られます。
- 決算内容:利益が出ているか? 赤字が続いていないか? 自己資本比率など
- キャッシュフロー:返済に回せるお金を毎月捻出できているか?
- 借入金の状況:既往借入金の残高・返済能力に見合った金額か?・返済状況(延滞の有無など)
- 事業の実現性:市場性・競合・ビジネスモデル・経営者の経歴
ここで重要なのは、保証協会が「融資したら終わり」ではなく、融資後もきちんと返せるかを見極めている点です。将来的な資金繰りの見通しをシビアに確認するのはそのためです。
コツ:「なぜ今、その金額を、その期間で必要なのか」を数字と根拠で語れることが大切です。
なぜたくさんの資料を要求するのか?
初めて保証協会を利用する経営者が戸惑うのは、提出書類の多さでしょう。決算書、試算表、納税証明書、資金繰り表、事業計画書など、多岐にわたります。
これには理由があります。保証協会は、もし返済が滞れば銀行に代わって返済を背負う立場です。つまり、最終的なリスクを背負う存在。そのため少しでも不安材料を減らすために詳細な資料が必要になるのです。
- 決算書・試算表:会社の現状把握の出発点となる資料です。財務の体力や資金調達余力を確認すると同時に、直近の業績トレンドを示すことで、銀行は今後の返済能力を見極めます。
- 資金繰り表:日々のお金の流れを数値化したものです。売上や支払の季節性を見通し、どのタイミングで資金が不足・余剰となるかを示すことで、返済可能額を具体的に説明できます。12か月分程度の見通しがあると評価が高まります。
- 事業計画:これからの売上見込みや利益率を前提条件として明示し、必要な投資とその効果を数値で整理するものです。あわせて融資実行の時期を示すことで、「計画が実現可能で、継続性がある」ことを銀行や保証協会に伝えられます。
- 裏付け資料:見積書や契約書など、資金使途の根拠を示す書類です。設備投資や仕入が実在し、事業にとって必要不可欠であることを裏付けることで、資金調達の説得力を高めます。
資料が多いほど審査が通りやすくなるわけではありませんが、矛盾がなく妥当性があるほど信頼度が上がります。
絶対に保証協会付きでないとダメ?(プロパー融資との違い)
結論:必須ではありません。銀行が自らの判断で貸すプロパー融資も存在します。この場合、保証料は不要ですが、銀行のリスクが高いため、実績・財務基盤・CFが安定している企業向けです。創業間もない・業績が不安定な場合は保証協会付の融資の方が現実的です。
プロパー融資までの考え方:
「最初は保証付の融資 → 返済実績をつくり財務基盤を安定させる → プロパー融資を検討」という流れが王道。
返済できなくなったときの「代位弁済(代弁)」とは?
保証協会付の融資でも、経営環境が悪化して返済できなくなる場合があります。その際に登場するのが 代位弁済(代弁=だいべん)です。
代弁とは、会社が融資を返済できなくなった場合に、保証協会が会社の代わりに返済を行うことです。 つまり、会社の借金を保証協会が一旦、肩代わりすることになります。銀行は保証協会から返済を受けるので、融資金が回収できなくなるという損失を防げます。しかし、ここで借金が帳消しになるわけではなく、会社の返済先が銀行 → 保証協会に切り替わるだけです。
代位弁済の流れ
- 会社の資金繰りが悪化→融資の返済ができず延滞が発生
- 銀行が保証協会に代位弁済を請求 → 協会が銀行へ代位弁済を行う(会社の借金を肩代わりして銀行に返済する)
- 以後、債権者の権利は保証協会に移る 求償権の発生=保証協会は会社に対して、肩代わりした分の返済を求める権利を取得する
- 保証協会から会社に対して、借金の一括返済や返済計画の策定を求める督促が行われる 一括で支払いができない場合、担保となっている不動産などが競売にかけられる可能性もある
代弁後に起きること
- 信用情報への影響:延滞/代位弁済の記録により、当面は新規融資が難しくなります。
- 返済計画の再設計:通常、一括返済はできない場合が多いので、現実的に支払える水準まで返済額を見直します。保証協会と協議し、分割返済や期間延長の取り決めをして返済額の調整を行います。その際には、収支改善の取り組みや資産の売却など、再建のための具体策を示すことが求められます。
- 経営改善の本格化:資金繰りを立て直すには、根本的な見直しが不可欠です。利益率を上げる工夫(値上げ・仕入先交渉など)、固定費の削減(人件費や家賃の適正化)、利益を生まない事業からの撤退、そして必要であれば新たな資本の導入など、抜本的な対策を実行していく段階です。
注意:代位弁済=最後の救済措置ではありますが、安易に頼るものではなく、早い段階で銀行や保証協会に相談し、条件変更(リスケ)や資金繰り対策で代弁を回避できる余地がないか検討することが大切です。
まとめ:賢く使えば、資金調達の強力な味方
- 保証協会は銀行のリスクを下げ、中小企業の資金調達を後押しする公的機関。
- 保証料の負担はあるが、その分融資の可能性が広がるというメリットがある。
- 審査は財務内容・返済原資・事業計画などが総合的にチェックされる。数字と根拠で語る準備を。
- 書類提出は返済できなくなるリスクの回避と事業の継続性を確認するために不可欠。
- プロパー融資は“次の段階”。まずは保証付融資で実績を作る戦略が王道。
- 返済ができない場合は代位弁済という仕組みがあるが、その後は保証協会に返済義務が残り、信用情報にも影響が出る。資金繰りが厳しい時は早期相談が必須。
初めての融資であっても、仕組みを理解し必要な資料をそろえれば、調達のハードルはぐっと下がります。保証協会は資金調達を後押ししてくれるパートナーである一方、経営の健全性を厳しく確認する審査機関でもあります。役割を正しく理解し、適切に対応することで、資金繰り改善の強力な支えとなるでしょう。
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