黒字なのにお金が足りない理由|銀行員が見た“黒字倒産”の仕組み(前編)

経営の盲点


「決算は黒字のはずなのに、なぜかお金が足りない。」
こんな相談は、銀行の現場ではめずらしいことではありません。むしろ黒字倒産は、決算書の数字だけを見て経営判断をしている企業ほど起きやすい“典型的な落とし穴”です。

前回の記事では、会社に必要な運転資金を把握して資金繰りを改善するための
👉 運転資金の計算方法
を解説しました。
黒字倒産の仕組みを理解するには、この「資金の動き」を把握する視点が欠かせません。

利益が出ているのにお金が残らない会社には、いくつか共通する構造があります。

  • なぜ黒字なのに資金が足りなくなるのか
  • どんな会社に起こりやすいのか
  • 銀行員はどこで危険サインを感じるのか
  • 資金繰り表を見ると何が分かるのか
  • 黒字倒産を防ぐために、経営者は何をすべきか

これらを、“現場で実際に見てきた銀行員の視点”から分かりやすく解説していきます。

黒字なのにお金が苦しい——もし一度でもそう感じたことがあるなら、今回の記事は必ず役に立つはずです。

黒字倒産とは

「黒字なのに倒産するなんて、本当にあるの?」
経営者の多くが最初にそう思います。しかし、銀行の現場では黒字倒産は珍しいことではありません。

結論から言えば、黒字倒産とは「利益は出ているのに、お金が足りなくなり資金繰りが破綻する状態」のことです。

決算書の「利益」はあくまで“会計上の数字”であり、会社の財布の中に残る“実際のお金”とは別物です。

銀行員として融資相談を受けていると、

「黒字だから大丈夫」
という社長は多いのですが、これは大きな誤解です。

黒字倒産が起きる会社の特徴は次の通りです。

  • 売上は伸びている
  • 利益も黒字
  • しかし資金繰りが苦しい
  • 借入の返済が重い
  • 仕入先や従業員の給与の支払いが遅れ始める
  • 銀行から追加融資が必要になる

「利益 ≠ お金」という原則に気づかないまま、日常の支払いによって資金がどんどん減り、やがて倒産ラインに追い込まれます。

この仕組みを正しく理解するには、親記事で解説した
👉 「資金繰り表の作り方」
を使う視点が不可欠です。

資金繰り表を見ると、本業のキャッシュフローが足りない会社は一目で分かります。
黒字倒産は決算書では見えませんが、資金繰り表なら確実に“兆候”をつかめるのです。

利益とお金が一致しない理由

黒字倒産の本質は、「利益が出ている=お金が増えている」ではないという事実にあります。
経営者の多くがこの違いを正しく理解していないため、資金繰りのズレが積み重なり、気づかないうちに資金ショートへ向かってしまうのです。

利益とお金が一致しない主な理由は、次の3つです。

① 売掛金は“利益でもお金でもない”から

決算書上の売上は、お金が入ったタイミングではなく、商品やサービスを提供したタイミングで計上されます。

実務では、売上の多くは「掛(かけ)」で発生します。

  • 売上→ 計上されても
  • 現金→ まだ入ってこない
  • 仕入や経費→ 先に支払いが発生する

このタイムラグが大きいほど、
「利益は出ているのにお金が足りない」
という状況に陥りやすくなります。

② 在庫は利益を押し上げても、お金を生まない

在庫が増えると、会計上は「資産」が増えます。
しかし現実には、その裏で仕入代金の支払いが先行しています。

在庫が売れて初めて現金になりますが、それまでの間は、利益にはプラスでも資金繰りはマイナスです。

在庫が増えると「利益は増えているのに、お金は減っていく」理由

会計上の世界(決算書)

  • 在庫が増える=資産が増える
  • 仕入分は在庫に振り替わるので、利益はあまり減らない
  • 数字だけ見ると「儲かっているように見えてしまう」

実際の世界(会社の財布)

  • 仕入代金の支払いで現金が減る
  • 在庫はお金に変わらない限り、ただの「寝ているお金」
  • 資金繰りだけを見ると、むしろ苦しくなっている

お金の流れ(ざっくりフロー)

仕入時: 現金 ↓ → 在庫 ↑ (利益はほぼ変わらない)
販売時: 在庫 ↓ → 売掛金 ↑ (利益は増えるが、まだ現金は入らない)
入金時: 売掛金 ↓ → 現金 ↑ (ここで初めてお金になる)

➤ 「在庫を増やす=利益が増える」ように見えても、現金が先に出ていくのが黒字倒産の落とし穴です。

特に、次のようなケースは商品が売れ残ったり、工事代金の入金が遅れたりした場合、黒字倒産の典型的なパターンとなります。

  • 流行商品の仕入れ
  • 季節商品の仕入れ
  • 建設業など材料費の先払い

③ 借入金の返済は“費用にならない”

中小企業で意外と理解されていない部分がここです。

借入金の返済は、お金は出ていくのに、決算書上は「費用」になりません。

  • 利息 → 費用(損益計算書P/Lに計上される)
  • 元金返済 → 費用にならない(損益計算書P/Lに載らない)

そのため、利益には現れない“返済負担”によって資金が減り続ける会社が多いのです。

銀行員として会社の財務内容を見ると、
「利益は十分でも、返済原資が不足している」
という会社は珍しくありません。

◆ まとめ:利益とお金のズレが黒字倒産を生む

利益は過去の取引を数字にしたものであり、お金の動きとは別物です。
このズレを理解していないと、決算書上は順調でも、会社の財布はどんどん苦しくなっていきます。

後編では、銀行の現場で実際に起きた黒字倒産の実例や、
資金繰り表でわかる危険サイン
倒産を防ぐために経営者が取るべき具体策を解説します。

👉 黒字倒産を防ぐ方法|危険サインと具体策(後編)

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