「毎月お金が足りない…」「黒字なのに資金繰りが苦しい…」そんな相談があとを絶ちません。原因の多くは、運転資金の“正しい計算法”を知らないことにあります。
銀行で長年融資相談を受けてきた経験から言えるのは、運転資金は“必要額を把握できている会社ほど資金繰りに強い”ということです。
この記事では、銀行が実際の審査で使う運転資金の計算方法と、資金繰りが悪化する会社の共通点をわかりやすく解説します。
運転資金とは何か
運転資金とは、会社が日常の事業を回すために必要な「やりくりのためのお金」です。仕入代金、外注費、人件費、家賃、水道光熱費など、毎月出ていく支払いのほとんどが運転資金に該当します。
特に中小企業では、売上の入金より支払いのタイミングが早く来ることが多く、黒字でも資金繰りが急に苦しくなることがあります。融資相談の現場でも、「利益は出ているのにお金が足りない」という相談は後を絶ちません。
運転資金=「日常のやりくり資金」
運転資金は「明日の仕入れ」「来週の給料」「毎月の家賃」など、日常の運転に必要なお金のことです。
会社は、売上代金が入ってくるまでの間、この運転資金で支払いをつないでいかなければなりません。信用取引が一般的な日本では、入金が30日〜60日後ということも珍しくありません。
運転資金が不足すると何が起こるか
- 仕入ができず、売上が減る
- 資金繰りのために高金利の借入に走ってしまう
- 支払い遅延で信用を失う
- 融資相談をしても「返済能力が弱い」と判断される
事業の中身が健全でも、資金繰りが悪化しただけで経営が行き詰まることは珍しくありません。
運転資金が不足する会社の共通点
銀行で融資相談を受けていると、資金繰りが苦しい会社には共通した特徴があります。
- 売上入金が遅く、支払いが早い
- 在庫が多く、キャッシュが先に出ていく
- 粗利率が下がっていることに気づいていない
- 支払いサイクルが月末・月初に集中している(※ 支払いが集中すると、手元資金が一気に減ることもあります)
特に多いのが「売上が増えたのに資金繰りが苦しくなる」というパターンです。売上=お金ではなく、売上が増えるほど先行して支払うコストが増えるため、運転資金が足りなくなることがあります。
銀行が運転資金を見る3つの視点
銀行は運転資金そのものより、“資金繰りが破綻しないかどうか”を重視します。
① 入金サイト・支払いサイトのズレ
売上入金が60日後、支払いが30日後なら、会社は30日分の資金を自前で用意しなければいけません。このズレが大きいほど運転資金は多く必要になります。
② 粗利と固定費のバランス
粗利が下がると資金繰りは急速に悪化します。赤字会社より、薄利で売上だけが増えている会社の方が、資金繰り面では危険なケースもあります。
③ 手元資金の推移(資金ショートの危険度)
銀行は「キャッシュの残高が毎月どう推移しているか」を見ています。売上が安定していても、手元現金が減り続けていれば融資が難しくなります。
運転資金の計算方法(銀行が使う式)
実務で使われるシンプルな計算式はこちらです。
銀行が使う基本式
運転資金 = 売掛金 + 在庫 - 買掛金
この式は「仕入 → 在庫 → 売掛 → 現金化」という流れのどこにお金が滞留しているかを示します。
固定費1か月分を足して考える(実務的な目安)
上の式に加え、銀行では運転資金として 「最低1か月分の固定費」 を必要資金に加えて考えることも多いです。
理由は、急な売上減少や支払い遅延が起きた場合でも、1か月は事業を回せるだけの資金があるかを確認するためです。
また、銀行で長期資金として運転資金を融資する場合、実務上は 「運転資金の3か月分」 をひとつの目安にするケースも少なくありません。一定期間の支払いをカバーできる資金を長期で用意しておくことで、短期的な資金繰り悪化による行き詰まりを防ぐ狙いがあります。
計算例(小規模企業のケース)
- 売掛金:300万円
- 在庫:200万円
- 買掛金:150万円
この場合の運転資金は、
300+200−150=350万円
毎月の固定費が150万円なら、
350万円+150万円=500万円(必要運転資金)
手元資金が500万円を大きく下回っていれば、資金繰り悪化の可能性があります。
運転資金を改善する方法
運転資金は「売上を増やす」より、「お金の流れを整える」方が改善しやすいです。
- 入金サイトを早める(可能なら早期入金)
- 支払いサイトを延ばす(取引先と交渉する)
- 在庫量を適正化する
- 粗利率を改善する
- 短期借入を長期資金に借換して圧迫を減らす
特に、短期借入で運転資金が圧迫されている会社は、長期資金へ借換えるだけで資金繰りが安定するケースがあります。短期借入は返済期限が短く、更新時期ごとにまとまった返済が必要になるため、どうしても資金がブレやすくなります。
これを長期資金に借り換えることで、毎月の約定返済に切り替わり、少しずつ確実に返していく返済計画に変わります。返済が月々の一定額になることでキャッシュアウトのピークがなくなり、資金繰りは安定します。
まとめ:運転資金を“見える化”すると資金繰りは安定する
運転資金は利益とは違い、現金の動きそのものです。必要額を正しく把握し、固定費・在庫・支払いタイミングを見える化するだけで、資金繰りの改善余地が見えてきます。
資金繰りに悩む会社の多くは、利益ではなく「お金の流れ」を把握していません。運転資金を定期的に点検することが、融資審査でも経営改善でも大きな効果を発揮します。



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